こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 チラリと視線がガチ合って、頬が熱くなる。百合園さんの顔も心なしか紅潮している気がして、無言で近くにあったエアコンのスイッチを入れた。
 きっとこの部屋が暑いんだ。こんな話をしているから、特に。

「えー、それって初対面ってこと? 一緒に行ってたわけじゃなくて?」

 崎田の問いかけに、百合園さんがこくんと頷く。

「なにがあったらそうなるんだ? 六花、そこんとこ詳しく教えてくれ!」
「俺も知りたい!」

 がっつく2人をよそに、僕はふぅと息を吐く。少しずつ気温が下がって来たぞ。早く熱っぽい体を覚ましてくれ。

「わたし、はしゃぎすぎて迷子になっちゃって。泣いてたら、同じくらいの男の子が近付いて来て。僕も1人だから、一緒にいてあげるって手を握ってくれたの」

 小1のくせに、キザな野郎だな。僕なんか、高校生になっても女子と手を繋いだことすらないのに。

「それヤバッ! マンガの世界みてぇ。で、名前とか学校とか聞いたの?」

 ううんと首を振る百合園さんに、チッと舌打ちして。

「なんだよ、そいつ! 名乗りもしないとは男前じゃねぇか! 癪に触るけど、六花、それはもう運命だ! どうする、探すか⁉︎」

 興奮気味に立ち上がるカザネ。勢いが増すと、迫力があり過ぎるんだよ。
 熱くなって来たのか、マスクを外した。露わになった素顔を、崎田がじっと見ている。

「やめてよ〜。それは過去の話なんだから。それに、その子はわたしのことなんて覚えてないよ」

 言いながら眉を下げる百合園さんと、視線が触れ合った。
 今日はよく目が合う。意識して、僕が見ているからだ。
 でも、勘違いしてはいけない。

 だって彼女は、ーー成瀬琉生が好きなのだから。