こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

「よう、山田! 邪魔するぜー」

 どかどかと崎田が乱入して来た。僕のベッドにダイブして、気持ちよさそうにリラックスしている。

「えっ……なに?」
「今から俺の部屋来いよ。みんなで怪談話しようってなってさ。やることねぇし、山田ヒマだろ?」

 寝そべりながら、崎田が眠そうにあくびをした。
 中学の時でさえ、ひとり部屋で就寝前に虚しく寝たんだ。誰かに誘われたことなんて、一度もなかった。

「……でも」
「女子も来るぞー。百合園さんとか」

 ニマリと笑う崎田。そう言えば、僕が乗っかるとでも思っているのか。心外だな。

 結局、ついて来てしまった。
 僕の心には信念がないのか。ほんの少し、楽しそうだと思ってしまったばかりに。

「よし、そろったな! 始めようぜ〜」

 崎田の部屋には、百合園さんとカザネ以外誰もいない。
 あれ、他の人たちはどうしたんだ?

「どんな怪談話からすっかなぁ〜」

 ウヒヒと笑って懐中電灯を付ける崎田に、カザネが待ったをかける。

「暗くすんな。それと、その、怖いのは苦手なんだ。だから、他の話にしよう」

 マ、マジ? と言いたげな顔で、崎田が懐中電灯を消した。
 さすがにカザネに対して強く出られないらしく、じゃあどうすっかなぁ〜と頭をかいている。
 なぜかそわそわと落ち着かない僕。
 そうか、こういったイベント行事の時はいつも単独だから、誰かといる状況に慣れないのか。

「おっ、ならこんなんどう? みんなの初恋話聞かせて〜みたいな」

 ひらめいたと言わんばかりに、崎田の表情がパッと明るくなった。
 待て、待て。そんなハードルの高い話、僕に出来るわけが……。

「それいいね〜! わたしも聞きたいなぁ」
「……恋バナってやつか。面白そうだな!」

 意外に2人ともノリノリで、自己紹介の挨拶並みに固まっているのは僕だけだった。