こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 予報通りの雨。バスに揺られながら、思わずため息がこぼれる。
 とうとうこの日が訪れてしまった。体育祭、学園祭、二年に進級してから来るな来るなと特に唱えていたものは修学旅行だ。

 イベント行事は、全て憂鬱でしかない。つるむ友達がいない人間にとって、これほど過酷な空間はないのだ。
 あらためて、ぼっちを実感させられる時間だ。

 案の定、バスの席順もあまりものでひとり席。その方が気楽でいいと言うのは、事実だが少し強がりも入っている。

 1人旅へ来たと思えば、自由行動もそれなりに楽しめる。自分の行きたいところへ行けるし、見たい店にだけ入ればいいのだ。
 なんて身軽で効率がいいんだ。と心でつぶやきながら、沖縄産のパイナップルを試食する。
 うん、うまい。
 家族への土産を買って、気づいたらエコバッグがパンパンになっていた。ちょっと買いすぎたな。

 目的地のホテルへ到着して、みんなが荷物を運び出す。
 まだ1日目が終わったばかりか。明日はクラスで行動だから、1人でいると浮くだろうな。
 2人部屋の相方は、荷物を置くとさっさと出て行った。僕といて話すこともないだろうし、仕方がないか。

 パジャマや下着を出して、風呂の準備を始めたとき。コンコンと、ドアが鳴った。
 ……誰だ? もしかして、速攻で消えたもう一方の客だろうか。