こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 ため息ばかりを吐いていると、ハッと顔が思い浮かぶ。そうだ、崎田! アイツなら、たくさんの女子と連絡し合っているだろう。
 ……恥を忍んで、聞いてみるか。

『こんばんは。質問したいのだが、女子は好きでもない男にハートを送るのでしょうか?』

 えいっと飛行機マークを押したと同時くらいに、既読とついた。
 いくらなんでも早すぎるだろう。ヤツは四六時中スマホにかじりついているのか?
 数秒もかからないで、ピコンと文字が出る。

『仲よかったら使う人もいんじゃね?』
『てか、山田!』
『昼のココアシカトすんなし』

 連続で送られて来るから、返答をする間がない。打っている最中に、また新たな言葉が来た。
 早すぎるんだよ。もう、そのままでいいやと投げやりになる。

『ありがとう』
『なんだよ、ありがとうって』
『まあいいわ。暇なときは相談のってやるからさ。気にせず送って来いよ』

 ……崎田って、意外といい奴じゃないか。少し見直したぞ。

『俺と秘密の協定結ぼうぜ』
『協定とは?』
『俺がいろいろアドバイスする代わりに、山田が鬼頭さんの素顔写メ撮るってのどう?』

 なるほど、それが真の目的だったわけか。どうりで調子のいいことを言うと思ったら。
 しかし、僕が崎田を頼ったことも事実だ。これは物々交換なるものだな。

『撮れる保証はない。なんせあの鬼頭さんだから。でも、努力はしてみる。それでもいい?』
『オッケー!』
『んじゃ、協定成立っつーことで!』
『また明日なー』

 気持ち悪い動きをしたネコのスタンプが、ポンと表示された。
 だから、打つの早すぎるんだよ。質問がもうひとつあったのに、聞きそびれてしまった。

「返信はいらないって、何も送らない方がいいのか……」

 もんもんとしながら、とりあえず崎田に眠りのスタンプを押す。
 女子と連絡を取り合うなど、まだ僕にはハードルが高すぎたようだ。