こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 一呼吸おき、とりあえずは見ることにした。家族から、緊急の連絡が入った可能性もなきにしもあらずだからな。

 ブーブーと連続して送られてくる。
 崎田はスマホを触っていないし、またカザネか?
 テロップに現れた名前に、心臓がドキッとする。ゆ、百合園さんだ!
 ゆっくり押したトークページに、文字が表示された。

『スキンケア』
『にく』
『納豆』
『天ぷら粉』
『モッツァレラ』

 えっ、ええ……なんだこれ。
 まだピコンピコンと続く文字は、あきらかに買い物リストだ。

『イヤリング』
『インナー』
『カナヅチ』

 最後のカナヅチって、釘打つ金槌? ……どういうこと?
 頭の中がハテナで埋め尽くされるけど、今はそれどころじゃない。百合園さんまで、メモ代わりに使うなんて……あんまりだ。
 がっくりと肩を落としていると、つんと背中をつつかれた。

「ふぎぁッ! な、なに⁉︎」
「元気ないね。どうしたの?」

 天使の微笑みが、今は悪魔に見えて仕方ない。

「い、いやぁ……その、さっきのココアトークだけど……」
「ココアトーク?」

 数秒停止して、百合園さんが自分のスマホを確認する。そのうち一瞬で顔色が沸騰して、

「……やだっ、ごめんね! これ、昔使ってたスマホに送ったつもりだったのに。メモにしてて」
「そう……なのか」
「だから、忘れて!」
「……それなら、全然」

 よかったぁーー! 全力で安心という文字が浮かび上がった。ただの誤送だったのか。
 それにしても、百合園さんから初めてのメッセージがメモの勘違いだとか、僕らしいな。
 それほどまで存在感が薄いとは。なにも反論できないところが切ない。