こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 ココアトークたるもの、連絡手段に使うとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
 授業中にも関わらず、ぶるぶるとスマホが震えている。
 無視して休み時間に開いてみると、文字がずらりと並んでいた。

『ひまー』
(せん)ちゃん(教師)白髪はっけーん』
『やまだー! 鬼頭さんってなんでマスクしてんの?』
『なーなー見ろよ』

 コイツ、授業を聞け!
 昨日ココアトークを交換したのはいいとして、今日の午前中からずっとこの調子だ。崎田から、一方的に独り言が送られて来る。

 当の本人は、何も気にした様子もなく友達と話しているから、単なるSNS気分で利用されているとしか思えない。
 こんなの返事しなくていいよな。ココアトークを閉じたとたん、またしてもスマホが鳴る。
 いい加減にしろよ、まったく!

 鬼頭さんの文字に、思わず身構えた。
 えっ、なんだ? 緊急の用事でもあるのかと、開いてみると。

『空気が気持ちいい』

 青空の写真が貼られていた。教室にいないと思ったら、屋上でサボっていたのか。
 たしかにキレイだけども。どいつもこいつも、僕のスマホをSNS扱いし過ぎだろう!

 くそっと制服のポケットへ入れると、また振動するのが分かった。
 そろそろ無視していいかな。