こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 僕は運動が苦手だ。球技全般に抵抗があり、走りに関しては相性が合わないと言い切れる。
 だから体育の時間は苦痛でしかないのだが、一週間に2度もやってくるのだ。
 早く昼休みになってくれないかな。

 ボールの行き交うネット越しに、チラリと視線を送った。反対側のコートでも、女子がバレーボールをしている。
 なぜか、制服姿で見学している生徒が1名。あのカザネとかいう金髪黒マスクが、なぜか登校し始めたのだ。しかも同じクラスだったらしい。
 2年に進級して約二ヶ月半。一度たりとも顔を見せなかった奴が、

「ーーあっ、やべっ!」
「やま……!」

 今更なにを考えているのやら。
 ドゴッと鈍い音がして、エグいくらいの痛みが鼻から頬にかけて伝わってくる。
 うわ、最悪だ。
 尋常じゃない力で吹っ飛ばされて、僕の体は地面に叩きつけられた。

「大変だ! ぼさっとしてた山田にボールが当たったぞ!」

 クラスメイトの声が聞こえてくる。
 ぼさっとは余計だろう。それにしても、衝撃を受けた部分がじんじんと熱を帯びて来ている。

 ドクドクと熱いものが流れ出すような……血? 手のひらには、土に滲んで赤い液体が付いていた。
 鼻血が止まらない。目の前がくらくらして、意識が……。

「みんな、動かしちゃダメだよ! 誰かティッシュもってないかな?」

 百合園さんが近付いて来て、僕の血塗れの鼻を体操着の端で押さえた。
 そんなことしたら、血で汚れて汚くなるのに。

「山田くん、大丈夫? 今保健室に……」
「アタシが運んでやる」