こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

「たぶん、また上手くいかない気がして。山田くんとなら、いいシミュレーションが出来るかなって」
「悪いけど、他当たってほしい」

 下を向いたまま、弁当を片付ける。少し冷たい口調になってしまった。

「……そっか。変なことお願いして、ごめんなさい」

 ハッとして顔を上げると、この上なく切なそうに眉を下げる百合園さんが目に映った。

「……迷惑だったよね」

 最悪だ。最低過ぎる。言い方ってもんがあるだろうに。
 立ち去ろうとする彼女が、急に足を止めた。ムタがやってきて、ミャーと鳴く。
 ああ……なんて間が悪い猫なんだ。ほんとに、絶妙なタイミングで。

「……少し、だけなら」

 ベンチから勢いよく立ち上がったから、膝に置いていた弁当袋がころんと地面に落ちた。
 そのまま、手のひらにこぶしを握って。

「僕なんかが役に立つことないと思うけど、それでも良ければ、手伝うよ」

 成瀬永久への告白なんて、ほんとは聞きたくない。
 でも、百合園さんが悲しそうな顔をするから、仕方ないじゃないか。それに比べたら、こんなこと十倍もマシだ。