こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 二科目目、英語。少し暑くなってきたからか、首筋に汗がにじむ。
 下敷きで風を作ろうとした時、百合園さんがおもむろにセーラー服の裾をパタパタと揺らした。その拍子に、ちらりと肌の色が見える。

 うう……、心臓に悪い。慌てて反対へ視線を向けるのだけど、次はスカートへ風を送ろうとしている。
 いくら意識されてないと言っても、気が緩みすぎてないか? 俺が親なら心配になる。

「なんか急に暑くなってきたねぇ。窓開けよっか」
「……そうして下さい」

 ガチャリとスライドした窓から、そよそよと優しい風が舞い込む。
 ほんのり赤らんだ彼女の横顔がとてもキレイで、目が離せなかった。

「さっ、続きしよっ!」
「あっ、ああ……」

 ぴょんと跳ねるように腰を下ろして、百合園さんが滑らかにシャープペンを動かしていく。
 最近、一緒にいる機会が増えて忘れていた。彼女は学校の人気者で、本来ならば僕なんかと関わるはずのない人だ。
 誰に対しても優しくて超絶美人で、少し変わっているところはあるけど、百合園さんは……。

「……ねぇ、山田くん」

 ぽふっと額に手の温もりが伝わる。それから、首筋を両手で覆われた。

「ひっ、ふわぁっ!」

 なんだなんだ⁉︎ ほんのり冷たい指が、妙に背中をゾクッとさせる。

「よそ見ばっかりしてるから。ちゃんとこっち見て?」

 ガラス玉のような瞳にじっと見つめられて、ごくりと喉が鳴る。凄まじい透明感に吸い込まれそうだ。
 そっと指先が離れても、火照った頬は熱いまま。この頃の僕は、どうかしている。
 それじゃまるで……百合園さんのことが……。