放課後、夕日の差す教室に二人きり。そんなアバンチュールなやつらを見かけたなら、即刻羽交い締めにして屋上から吊し上げてやりたい。と思っていた中二の夏。
その二年後、まさか自分が経験者になろうとは夢にも思っていなかった。
今、僕の目の前に百合園さんが座っている。誰もいない教室に二人きりだ。ことの成り行きで、彼女に勉強を教えることになったのだ。
先日、成瀬先輩の放った一言が主な原因。僕は全く覚えていなかったが、賢い子が好きだと公言していたらしい。
それで……。
「山田くん、わたしに勉強教えてくれない? どうしても頭が良くなりたくて」
断る理由も見つからなかったので、承諾するはめになったというわけだ。
一科目目は、現文。文章を読み解いて、要約しろという問題。僕自身、あまり現代文は得意ではないのだけど、これくらいなら教えられるだろう。
「うーん、こうかな?」
どれどれと覗き込んで、うっと喉が潰れる。そうだ、百合園さんの字はすこぶる独自性が強いのだ。
よくこれで先生たちは読めているなと感心する。
「ねえねえ、どう? 合ってるー?」
「あっ、ああ……そうだなぁ。これは後回しにして、次の教科を先にやろう」
「……どして?」
少し膨れた顔も可愛らしい。斜め下から見上げる感じとか、長いまつ毛で虚になった目とか。
「これからの時代、最も重要なのは英語だから。そっちからやろう」
日本語じゃなければ、なんとか読めるかもしれない。
なんとかごまかして、僕は現文のノートを閉じた。
その二年後、まさか自分が経験者になろうとは夢にも思っていなかった。
今、僕の目の前に百合園さんが座っている。誰もいない教室に二人きりだ。ことの成り行きで、彼女に勉強を教えることになったのだ。
先日、成瀬先輩の放った一言が主な原因。僕は全く覚えていなかったが、賢い子が好きだと公言していたらしい。
それで……。
「山田くん、わたしに勉強教えてくれない? どうしても頭が良くなりたくて」
断る理由も見つからなかったので、承諾するはめになったというわけだ。
一科目目は、現文。文章を読み解いて、要約しろという問題。僕自身、あまり現代文は得意ではないのだけど、これくらいなら教えられるだろう。
「うーん、こうかな?」
どれどれと覗き込んで、うっと喉が潰れる。そうだ、百合園さんの字はすこぶる独自性が強いのだ。
よくこれで先生たちは読めているなと感心する。
「ねえねえ、どう? 合ってるー?」
「あっ、ああ……そうだなぁ。これは後回しにして、次の教科を先にやろう」
「……どして?」
少し膨れた顔も可愛らしい。斜め下から見上げる感じとか、長いまつ毛で虚になった目とか。
「これからの時代、最も重要なのは英語だから。そっちからやろう」
日本語じゃなければ、なんとか読めるかもしれない。
なんとかごまかして、僕は現文のノートを閉じた。



