こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 自分の方が先に仲良くなったのに、友人を取られた気になってもやもやする。中学の頃、女子がそう話しているのを小耳に挟んだことがある。
 当時は全くもって理解出来なかった。別に減るもんじゃないしいいだろ、と心の中でツッコんだ覚えがあるのだが、今になってその気持ちが分かった気がする。

 いつものように裏庭で昼飯を食べていたところ、草陰の方からムタの鳴く声が聞こえた。ムタとは、僕が唯一会話をするノラ猫の名前だ。
 おかしい。こんな猫なで声を出すなんて、誰かといるに違いない。

 居ても立っても居られなくなった僕は、まだ弁当箱におかずを残したまま、こっそり茂みを覗いた。

「かわいいねぇ。人慣れしてるけど、飼われてるの? それとも、誰かにエサもらってるのかなぁ」

 そこには、しゃがみ込んでムタの顎下を触る百合園さんがいた。
 やっぱり……ああ、そんなにゴロゴロと喉を鳴らして。僕だけに懐いていたはずなのに、コロッと落ちて薄情なヤツだ。
 もやもやとさせながら、しばらく観察を続ける。

「なになに? うんうん、えっ、相談があるの? わたしで良ければなんでも聞くよ」

 ムタと話し出したぞ。もうすぐで二か月の付き合いになる僕でさえ、何を言っているのか分からないのに、百合園さんは動物と会話することが可能なのか?
 ……彼女なら、ありえなくない。

「ええっ、そんなことがあったの? それはお気の毒に」

 なにがあったんだ? ……気になるな。
 もう少し前のめりになって、聞き耳を立てる。