こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 間違いなく、僕ーー山田真人(まさと)は後者だ。あんなキラキラした世界とは無縁の地味で冴えない奴がいきつく場所にいる。
 半袖の季節だというのに、たまに木枯らしが吹くのはそのせいだ。

 鬱陶しく伸ばされた前髪で目は隠れ、日光を浴びないから軟弱で陰気くさい。特定の友達もおらず、心の友は学校に住み着いているノラ猫だけ。

 ぼっち弁当を食べ終わり、残り時間は教室へ戻らず裏庭で暇を潰す。完全なる負け組。

 その点、クラスのアイドル的存在である百合園六花(ゆりぞのりっか)は、前者だ。誰がどう見ても美少女で、男子にモテる。
 色素の薄い髪に、長いまつ毛。目も星を散りばめたように輝きがあって、笑った顔が異常に可愛い。

 ほら、噂をすればなんとやら。
 いつもながらに花の香りを散りばめる百合園さんが、長い髪を揺らしながら歩いて来た。

 一人で昼飯を食べていたとバレるのがイヤだから、サッと校舎の陰に身を潜める。

 何かしてるぞ?
 百合園さんの前方に、誰かいる。あれはイケメンで有名な先輩、成瀬琉生(なるせるい)だ。ちくしょう、名前からしてスカしてやがるな。
 彼らは同じ方向へ歩いていく。

 後をつけてるのか?
 まあ、呼び出されて告白。それから付き合うってのがオチだな。見え透いた未来。少女漫画に住む人間は羨ましいぜ。
 自分とは無縁な世界に住む彼女らに、ケッとため息を吐く。


 おっ、なにか来た。えっ、熊、クマ⁉︎