浮気するなら容赦しない



「ねえ雫、今日のデートどこ行く?」

私は彼氏の(しずく)に駆け寄った。
馴れ初めは、雫に『お前以外は好きになれない』と告白された事。
今でも、関係は良好だ。

私の言葉を聞いて、雫は不満げに髪を弄る。
「別に今日行かなくてもいいだろ?明日の……十三日は、休みなんだし」
雫の言う通り明日は休日だけど、どうしてもその日は遊べない。
伝えると、雫は溜め息を吐いた。

「お前のそういうところ、嫌になる」
「嫌って……なんで、そんな事」
驚く私に、雫は言い切った。


「お前の事嫌いになったから」

「っ……どうして?私の何が悪かったの!?」
突然のカミングアウトに、思わず大声を出す。
「言っても理解できないだろ」
突き放すようなその台詞を残して、雫は去っていった。


…………私は下校中、彼の姿を見た。
そう―――他の女と手を繋いで、愛の言葉を囁く姿を。
「最近、この辺りのカップルが廃人みたくなってるらしいよ」
「怖ぁい。何かあったら守ってね、雫くん」
「当然。俺は、可愛いお前のためなら何でもするよ」


―――『お前以外は好きになれない』

その言葉を信じたのが間違いだったのか。
自分が裏切られたという事実を、私は静かに見据えた。



十三日……私にとって、これほど素敵な日はない。

ふと、雫の言葉が脳内でリフレインする。
―――『最近、この辺りのカップルが廃人みたくなってるらしい』
……カップル?嘘を吐かないで、共犯者の間違いよ。


私が閉じ込めている(・・・・・・・・・)のは、浮気をしている『共謀者』だけ。
一般的に魔女の日と称される十三日(悪魔の日)に、私はそれを実行する。

―――愛情を裏切るような人を、魔女(わたし)は絶対に許さない。

私の家系は、そうして生きてきた。
最初は、興味なかったけど…………浮気する人間は大嫌いだから、今はこの職が好きだ。
する事はただ一つ、瓶に、『そういう人』の魂を閉じ込めるのみ。
やり方も簡単で、呪文を唱えて、ターゲットの体の一部を瓶に突っ込むだけだ。
対象は、すぐに見つかる。分かりやすいから。

月に一度、そうやってきたとはいえ……自分の彼氏にそうする日が来るとは。
一気に中身が満ち、どす黒くなった瓶を、壁一面に広がる棚に飾った。


だけど、私は



―――…………浮気するなら容赦しない