週末――
セナ君にもらったチケットを手に、私は横浜にいた。
電車の中から、もう周りはライブTシャツ姿の女の子たちでいっぱいだった。
髪にリボンをつけている子、うちわを大事そうに抱えている子、連れと楽しそうに今日の話をしている子。
みんな、ライブが始まる前からきらきらして見える。
目の前に広がる会場の大きさに、思わず圧倒される。
……こんな大きな会場が満員になるんだ。
何人くらい入るんだろう。ちょっと想像もつかない。
駅からここまで歩いてくるだけでも、同じ方向に向かう人がずっと途切れなかった。
その全員が、これから同じステージを待っているのだと思うと、それだけで少しくらくらした。
でも……
セナ君の性格なら、そんな緊張もきっと楽しんじゃいそうな気がした。
人の多さとか、歓声とか、大きな会場とか。
そういうものに飲まれるんじゃなくて、むしろ全部自分の味方にしてしまいそうだ。
人の流れに乗って、チケット確認の列に並ぶ。
周りの子たちは慣れた手つきでスマホを開いて、席を確認している。
でも、私にはセナ君がくれたチケットしかない。
……え、これ本当に入れるのかな?
もしかして……からかわれてたりしないよね?
入れなかったらどうしよう……
そんな不安を抱えたまま、スタッフさんにチケットを見せる。
すると対応してくれた人が、一瞬だけ表情を変えて、無線で誰かと連絡を取りはじめた。
「……しばらくお待ちください」
そう言われて、列から外される。
どうしよう……
ニュースで『チケット転売で逮捕』とか見たことあるけど……
いや、そんなはずない。ないけど……怖い……
変な汗が出てくる。
このまま別室とか連れていかれたらどうしよう、なんて、考えなくていいことまで次々浮かんでしまう。
びくびくしていると、スーツ姿の男性がこちらに近づいてきた。
「招待チケットの方ですね?」
「は、はい」
「スターライトパレードのマネージャーをしている八神と申します。ご案内しますので、こちらへ」
「マネージャーさん……!私、先日セナ君と知り合った音羽 奏と申します」
言ってから、何その自己紹介、と自分で少し恥ずかしくなる。
でも八神さんは気にした様子もなく、穏やかに会釈してくれた。
招待チケットだったんだ……
言われるがままついていくけれど、内心のどきどきは全然止まらない。
マネージャーさんが出てきたことで逆に話が大きくなって、まだ心が追いついていない。
このまま連れていかれて、もし奥に警察とかいたらどうしよう……なんて、まだちょっとだけ疑ってしまう自分がいる。
そんな不安をよそに、大きな紙袋を手渡された。
「こちら、今回のライブのグッズ一式になります」
「えぇ!?グッズ!?」
「セナから『全部渡してほしい』と頼まれてまして。お席はこちらです。あとでまたお声がけに伺いますので、どうぞライブをお楽しみください」
案内された席は……アリーナ席、それも花道のすぐそば。
いわゆる『関係者席』らしい。
え、近い。
近すぎる。
こんな席、本当に私が座っていいの……?
紙袋を抱えて席に座り、そっと中身を確認する。
パンフレット、Tシャツ、うちわ、リボン、ペンライト……
いろんなグッズがぎっしり詰まってる。
わ……これが、ペンライト……!
一度持ってみたかったやつ!
カチカチとボタンを押すと、色がどんどん変わる。
なにこれ、すごい……
一本の棒なのに、押すたびに世界の色が変わるみたいで、つい何度も切り替えてしまう。
なんだか、とんでもない世界に来ちゃったみたい。
パンフレットを開き、パラパラとページをめくる。
ライブへの意気込み、撮り下ろしのスナップ、メンバー同士のやりとり。
写真からでも、彼らの魅力がまっすぐに伝わってくる。
笑っているだけの一枚なのに、どうしてこんなに目を引くんだろう。
格好いいな、と思う反面、どうしても頭に浮かぶ。
「……なんで私?」
セナ君の言葉がよみがえる。
『絶対楽しいから!』
……うん、きっと楽しいんだよね。
だって周りの女の子たち、開演前から涙ぐんでる子だっているくらい。
友達と手を握り合ってる子も、静かに目を閉じて深呼吸している子もいる。
それくらい、心から楽しみにしてる。
あの大きなステージに、セナ君が立つ。
……私の方が緊張してきた。
自分がステージに立つわけじゃないのに、不思議な高揚感と緊張で胸がいっぱいになる。
胸の奥がぎゅっと締めつけられて、なんだか泣きたくなるような感覚になった……そのとき。
会場が一気に暗転した。
直後、耳を劈くような歓声が場内を覆い尽くす。
その歓声と同時に、観客が一斉に立ち上がった。
セナ君にもらったチケットを手に、私は横浜にいた。
電車の中から、もう周りはライブTシャツ姿の女の子たちでいっぱいだった。
髪にリボンをつけている子、うちわを大事そうに抱えている子、連れと楽しそうに今日の話をしている子。
みんな、ライブが始まる前からきらきらして見える。
目の前に広がる会場の大きさに、思わず圧倒される。
……こんな大きな会場が満員になるんだ。
何人くらい入るんだろう。ちょっと想像もつかない。
駅からここまで歩いてくるだけでも、同じ方向に向かう人がずっと途切れなかった。
その全員が、これから同じステージを待っているのだと思うと、それだけで少しくらくらした。
でも……
セナ君の性格なら、そんな緊張もきっと楽しんじゃいそうな気がした。
人の多さとか、歓声とか、大きな会場とか。
そういうものに飲まれるんじゃなくて、むしろ全部自分の味方にしてしまいそうだ。
人の流れに乗って、チケット確認の列に並ぶ。
周りの子たちは慣れた手つきでスマホを開いて、席を確認している。
でも、私にはセナ君がくれたチケットしかない。
……え、これ本当に入れるのかな?
もしかして……からかわれてたりしないよね?
入れなかったらどうしよう……
そんな不安を抱えたまま、スタッフさんにチケットを見せる。
すると対応してくれた人が、一瞬だけ表情を変えて、無線で誰かと連絡を取りはじめた。
「……しばらくお待ちください」
そう言われて、列から外される。
どうしよう……
ニュースで『チケット転売で逮捕』とか見たことあるけど……
いや、そんなはずない。ないけど……怖い……
変な汗が出てくる。
このまま別室とか連れていかれたらどうしよう、なんて、考えなくていいことまで次々浮かんでしまう。
びくびくしていると、スーツ姿の男性がこちらに近づいてきた。
「招待チケットの方ですね?」
「は、はい」
「スターライトパレードのマネージャーをしている八神と申します。ご案内しますので、こちらへ」
「マネージャーさん……!私、先日セナ君と知り合った音羽 奏と申します」
言ってから、何その自己紹介、と自分で少し恥ずかしくなる。
でも八神さんは気にした様子もなく、穏やかに会釈してくれた。
招待チケットだったんだ……
言われるがままついていくけれど、内心のどきどきは全然止まらない。
マネージャーさんが出てきたことで逆に話が大きくなって、まだ心が追いついていない。
このまま連れていかれて、もし奥に警察とかいたらどうしよう……なんて、まだちょっとだけ疑ってしまう自分がいる。
そんな不安をよそに、大きな紙袋を手渡された。
「こちら、今回のライブのグッズ一式になります」
「えぇ!?グッズ!?」
「セナから『全部渡してほしい』と頼まれてまして。お席はこちらです。あとでまたお声がけに伺いますので、どうぞライブをお楽しみください」
案内された席は……アリーナ席、それも花道のすぐそば。
いわゆる『関係者席』らしい。
え、近い。
近すぎる。
こんな席、本当に私が座っていいの……?
紙袋を抱えて席に座り、そっと中身を確認する。
パンフレット、Tシャツ、うちわ、リボン、ペンライト……
いろんなグッズがぎっしり詰まってる。
わ……これが、ペンライト……!
一度持ってみたかったやつ!
カチカチとボタンを押すと、色がどんどん変わる。
なにこれ、すごい……
一本の棒なのに、押すたびに世界の色が変わるみたいで、つい何度も切り替えてしまう。
なんだか、とんでもない世界に来ちゃったみたい。
パンフレットを開き、パラパラとページをめくる。
ライブへの意気込み、撮り下ろしのスナップ、メンバー同士のやりとり。
写真からでも、彼らの魅力がまっすぐに伝わってくる。
笑っているだけの一枚なのに、どうしてこんなに目を引くんだろう。
格好いいな、と思う反面、どうしても頭に浮かぶ。
「……なんで私?」
セナ君の言葉がよみがえる。
『絶対楽しいから!』
……うん、きっと楽しいんだよね。
だって周りの女の子たち、開演前から涙ぐんでる子だっているくらい。
友達と手を握り合ってる子も、静かに目を閉じて深呼吸している子もいる。
それくらい、心から楽しみにしてる。
あの大きなステージに、セナ君が立つ。
……私の方が緊張してきた。
自分がステージに立つわけじゃないのに、不思議な高揚感と緊張で胸がいっぱいになる。
胸の奥がぎゅっと締めつけられて、なんだか泣きたくなるような感覚になった……そのとき。
会場が一気に暗転した。
直後、耳を劈くような歓声が場内を覆い尽くす。
その歓声と同時に、観客が一斉に立ち上がった。
