『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

 大須賀が体をゆっくり揺すり始めたら、あとはただ翻弄されていくだけ。

 不規則に揺すぶられながら、紗月は彼の胸に必死にすがりついていた。ふと、左の口角の上にある小さなほくろが目に留まり、気づけば指先が吸い寄せられるように、そっと撫でていた。

「……紗月っ……」

 大須賀は熱い息を吐くと、紗月の手首を掴み、その指先にキスをする。彼に名を教えた記憶があったか一瞬だけ疑問が浮かぶ。しかし、そのままベッドの上に押さえつけられ今度は唇に吐息すら奪うキスをされると、それ以上は考えられなくなる。

 途切れなく続く快感に、紗月の思考は白く霞んでいった。



 島航生と初めて個人的な交流を持ったのは、高校三年の夏休みだった。

 当時紗月は中学三年生の妹の乃(の)愛(あ)が入院する病院に見舞いに通っていた。

『さっちゃんごめんね、受験勉強あるのに毎日来てもらって』

 ベッドの上で上半身を起こした状態で乃愛は申し訳なさそうな顔になる。

『大丈夫だよ。このあと学校に行って勉強するから。それに、受験生なのは乃愛も一緒でしょ』

『わぁ、いやなこと思い出させないで』