『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました

 漏れ出る声は自分と思えないくらい甘ったるくて恥ずかしい。それでも紗月は耳を塞ぐ代わりに、彼の艶やかな髪に手を伸ばした
 彼は丹念に、時間をかけて紗月の体を溶かしていった。

「……力、抜いて」

 紗月が蕩け切ったのを確認すると、大須賀は耳元で囁き、ゆっくりとその身を沈めてきた。

 初めての感覚に思わず息を詰め、目をつぶる。

「……辛くない?」

 感覚が馴染み、薄目を開けると大須賀が気遣うようにこちらを見ていた。

「う、ん……大丈夫。ありがとう。大須賀さんは、優しいね」

 紗月は今できる精一杯の笑みを彼に向ける。

(今日、この人に会えて良かったのかもしれない)

 一夜限りの関係にもかかわらず、二十八にもなって初めての紗月を面倒がることなく、丁寧に扱ってくれた。

 彼に肌を慈しまれて、求められて、鑢をかけたようにザラついていた紗月の気持ちは間違いなく癒された。

「……そんなかわいい顔、しないで」

 大須賀は小さく息を吸い、耐えるように喉を鳴らした。余裕が消えたのがわかり、紗月の体はキュンと収縮する。

「それに、俺は優しくなんてない」

「あっ……」