「ごちそうさまでした」
「また来週、会社でねー。お疲れ様!」
まだ飲み足りないと騒ぐ人たちを通り過ぎて、1人夜風に当たりながら家に帰る。
まさか私が、リストラの標的になるなんて。できればずっと、他人事でありたかった。悲しいというより絶望が大きくて、心が折れそう。でも何故か涙も出ないし、何となくこうなることを分かっていたような冷静さがある。
「また来週ね…。週半ばで居なくなるけど」
ポツポツと下を見て歩いていると、誰かに腕を後ろに引っ張られた。
「…あ、見つけた!」
ガバッと振り返ると、先ほど通り過ぎた集団の中の1人のようで、〝ナンパしてるぞ〟と奥で他の人たちが盛り上がっている。
酔っ払いの相手なんてできるほど、余裕はない。手を振り払おうと体を捩るけど、びくともしない。私をナンパしようとしている当の本人は、目を輝かせて嬉しそうに私を見ている。
「あの、離していただけませんか?」
「お夏さんですよね?」
「お夏…さん、ではないです」



