前世での誓い






「12時過ぎにエントランス集合で良い?」


「っ、はい」





10階でエレベーターの扉が開き、チラッと新さんを見てから降りた。新さんも私の方を見ていてくれて、子犬が飼い主に何か訴えるような目と合う。目尻を下げて微笑んでいて、その時の表情に息を呑んだ。


すぐに扉は閉まり、エレベーターはさらに上の階へ行く。私の足は止まり、新さんと目が合ったまま動けないでいた。





「輝いてた…」


「何が?」


「…あ、おはようございます」





先輩の声が聞こえて我に返り、ようやく足と思考が動いた。金曜日にご飯に連れて行ってもらったお礼を言うと、そんなことは良いからと華麗に流されて、何が輝いていたのか質問攻めにあう。



同じビル内にある、別の会社の男性社員の笑顔が輝かしいんです。なんて朝から変態チックな発言は、自分の脳内だけに留めておきたい。





「私、何か言ってましたか?月曜日で寝ぼけてたのかもしれないです」


「えー。はぐらかすの?西村さんの恋事情、気になるんだけど」


「何!?憂鬱な月曜日に元気もらえる話?」





私に集らなくて良いから。未来のない私に、ゆっくりと子犬の惚気に浸らせて。


わざとらしく〝何ですかねー?〟と先輩たちの攻めを避けて、自分の席に着く。さぁ、今日の1日は引き継ぎとデスク整理で終わるかな。