ある屋敷、外の生垣の影に2人は身を潜めて抱き合っていた。
「ごめんなさい…」
「謝らなくて良い。僕がこうしたいんだ」
「でも見つかったら、私もあなたもどうなるか分かりませんから」
離れようとするお夏を新之丞は、強く抱きしめた。
「…今は難しいかもしれない。でも、次の世では必ず堂々と会える」
「はい、必ず。あなたにお会いしたいです」
「迎えに行くよ」
新之丞の肩に顔を埋めて頷いたお夏。すると、羽織の肩にお夏の涙が数滴溢れる。お夏は慌てて離れ、羽織を見るとやはり涙で濡れていた。
こんなこと、屋敷に戻られてどなたかに気づかれてしまっては、新之丞様のお立場が危うい。
「申し訳ございません!私は何てことを…」
「お夏、大丈夫だ。お夏にこの羽織を託したい。ずっと持っていて。いつかまた会えた時、これを渡してほしい」
「また会えた時…」
「いつも、お夏のそばに居る。君を愛していると、その羽織を贈りたい」
「ありがとうございます。私も新之丞様を、いつも想っております」
そうして2人は、以降会うことはなく人生を終えた。



