「……気をつけろよな」
ぶつかってきた生徒に注意をし、最後に雄星を睨んだ先輩たちは、校舎の方へと歩いていった。
雄星も校舎の方に進もうとすれば、オフホワイトの髪をした生徒に呼び止められる。
「ねえ、君も新入生だよね? 僕、朝比奈優希っていうんだ。よろしくね!」
「……ああ、よろしく」
短く答えた雄星は、自分の名前を名乗ることもなく、先に校舎の方へと歩いていく。
わざわざ自己紹介をしなくても、自分のことを知っているものだろうと思ったからだ。
雄星は、三歳の時から芝居をしている。
舞台俳優である父親の背中を見て育ち、稽古を重ね、子役として、実際の舞台にだって何度も立ってきた。
けれど、どれだけ努力をしても、いい演技をしても、雄星自身が認められることはない。
“早乙女晃成の息子”という色眼鏡で見られてしまう。
(どうせ“早乙女晃成の息子”としか見られないのなら……父さんから離れたこの学園で、芝居についてめいいっぱい学んでやる。そして、父さんを超えられるくらい上手くなってみせる)
そんな決意を胸に、雄星は舞凛学園に入学してきたのだ。



