「……あ、そういえば昨年のキングってさ」
塁生が、思い出したかのように口を開いた。
謙杜と話し終えて、再び台本に目を通していた雄星は、わずかに肩を揺らす。
けれど誰もそのことには気づかず、話は進んでいく。
「クラスメイトが言ってたけど、何かめっちゃ有名な人らしいよ。一年生でジョーカーを獲って、二年生になった昨年にはキングを獲ったらしいし」
「へえ、そんなにすごい人なんだね。僕もその人のお芝居、観てみたいなぁ」
「まあ、これから観る機会なんてたくさんあるんじゃね? それこそ、五月の舞台は試験も兼ねてるから、全学年参加なわけだし」
「そっか。他の舞台も、生徒は自由に観ていいことになってるもんね」
優希は、他の生徒の舞台を観れることが楽しみで仕方なく、今から浮き立っている。
「先輩たち。昨年のキングって、何て名前の人なんですか?」
塁生は一切の悪気などなく、気になったことを尋ねただけだ。
しかし、そのキングの正体を知っている二年生組は、言ってもいいものかと、迷うような顔をしている。



