「んー……つーか朝比奈ってさ、実際に舞台に立った経験はあるわけ?」
手にしていたカフェオレのパックジュースを飲んでいた塁生は、優希がメッセージを打ち終えたタイミングを見て尋ねた。
雄星の実力は、実際に演技を目にしたので分かっている。
しかし、優希の演技はまだ見たことがない。
雄星の方から優希を誘ったのだと聞いているし、もしかしたらものすごい実力者なのかもしれないと、塁生は純粋に気になっていたのだ。
「ううん、僕は舞台に立った経験はないよ」
「そんじゃあ、これまでレッスンスクールで演技を習ってたりは?」
「それもないかな。舞台も、テレビや配信サイトで観れるものはたくさん観てきたけど、実際に舞台を観に行ったことだって、片手で数えられるくらいしかないし」
「え、マジで?」
昨今の演劇ブームで、舞台を観劇できる施設は年々増え続けている。
しかも、この学園に入学してきたということは、芝居が好きな人間のはずだ。
それなのに、それほどしか生の舞台を観たことがないと知り、塁生も、黙って話を聞いていた雄星も驚いた。
「朝比奈、お前ってさ……」
――何でこの学園に入学しようと思ったわけ?
塁生はそう尋ねようとした。
けれど、背後から気配もなく現れた人物に驚かされ、紡ぐはずだった言葉が音になることはなかった。



