「その……俺の父親は、八乙女晃成なんだ」
「……ん、八乙女晃成って、あの有名な舞台俳優の?」
口いっぱいに詰め込んでいたクリームパンを飲み込んだ優希も、八乙女晃成の存在はさすがに知っている。
雄星が頷けば、優希はのほほんとした笑顔を浮かべた。
「へえ、そうなんだね」
「……それだけか?」
「へ? それだけって……?」
「いや、もっとこう……」
雄星は困惑した。
父親の正体を明かせば、大体は驚かれたり、八乙女晃成の話が聞きたいと言われたり、サインをねだられたり。
そんな反応が普通だと思っていたからだ。
だけど優希の反応は、そのどれとも違っていた。
「あっ、僕もね、もちろん、八乙女晃成さんのお芝居は観たことあるよ。すごいよね。観ている人の心を一瞬でつかんじゃうような、目が離せなくなるような演技をしててさ……僕もあんな風にお芝居ができるようになりたいなぁ。負けてられないなって思うよね!」
気合十分! といった様子で拳を握りしめている優希の姿を見て、雄星は拍子抜けしてしまった。



