黒瀬部長は部下を溺愛したい



「……慧さん?」
「こっち」

 連れて行かれたのは、少し人通りの少ない公園。
 ベンチに座ると、慧は自然に莉央を自分の隣へ引き寄せる。
 自然と肩が触れる。

「……俺も帰したくなかった」
「……っ」
「でも、莉央が困るなら我慢しようと思ってた」

 その言葉が優しすぎて、莉央の胸がぎゅっとなる。

「……困ってない、です」
「うん?」
「……もっと一緒にいたい、です……」

 言った瞬間、恥ずかしくなって俯く。
 すると……ふわっ、と頭に重みがかかる。
 慧が莉央を抱き寄せて、そのまま髪にキスを落とした。

「……かわいすぎない?」
「え……っと」
「そんな顔されたら、本気で帰せなくなる」

 低く、甘い声。
 慧の腕の中は安心するのに、心臓だけはずっと忙しい。
 しばらくして、慧がぽつりと言った。

「……30分だけ散歩する?」
「30分で足ります?」
「足りない」
「……ふふ」
「だから困ってる」

 そう言って笑う優しく笑う。
 この瞬間が好き。
 離れたくない。
 同じ気持ちでいてくれる恋人なんだと実感する。

 マンションの前で、慧がそっと莉央の頬に触れる。

「でも……今日はちゃんと帰す」
「……はい」
「でも次はないかも。莉央が帰りたくないって言ったら……」
「言ったら?」
「たぶん甘やかして帰さない」
「……それ、ずるい誘い方みたいですよ」
「誘ってるから」

 最後に、やわらかいキス。
 短いのに、離れがたくなるキス。

「……おやすみ、莉央」
「おやすみなさい、慧さん」

 離れていくのが寂しい……けど。
 でも次が楽しみで。
 そんな恋をしている自分が、たまらなく幸せだった。

To be continued