黒瀬部長は部下を溺愛したい



 キラキラ輝くイルミネーション。

「そろそろ帰るか」
「そうですね」

 でも慧はまだ手を離してはくれない。

「慧さん?」
「……やっぱり」

 顎をそっと持ち上げられる。

「莉央」

 甘い声。
 慧の指が、髪を耳にかける。
 その仕草だけで、くらくらする。

「……キスしたい」

 低く落ちた声に、息が止まった。

「嫌なら止める」

 そんなこと言うのは反則だ。
 こんな優しい顔されたら。
 拒否なんて、できるわけない。
 小さく頷くと、慧がふっと笑った。

「……ありがと」

 その瞬間。
 引き寄せられて、唇が重なる。
 優しい。
 でも、熱い。
 触れるだけのキスなのに、心まで溶けそうだった。
 離れたあとも、慧は至近距離のまま莉央を見つめる。

「はぁ……危な」
「え?」
「可愛すぎて、このまま帰したくなくなる」
「~~っ」
 
 耳元で囁かれて、また鼓動が跳ねる。
 なのに慧は困ったみたいに笑った。

「でも今日は我慢する」
「慧さん」
「その代わり……」

 腰を抱かれる。
 逃がさないみたいに。

「次の休み、一日俺にくれ」

  独占欲丸出しの声。

「……はい」

 答えた瞬間、慧が嬉しそうに目を細めた。
 その顔を知っているのは……莉央だけ

 ◆

 帰り道。
 少し冷たい夜風の中、慧が繋いだ手を離さないまま歩く。

「……今日、すごく楽しかったです」
「俺も」
「また来たいですね」
「うん。また来よう」

 少し間が空いて、慧が覗き込んでくる。

「次は、泊まりで?」
「へ……っ!?!?」
「そんな顔するってことは、嫌じゃないんだ?」
「ちょっと、もう……ずるいですよ……」

 慧がくすっと笑う。
 そして、人通りの少ない場所で足を止めて……。

 ちゅ……。
 そっと、額にキス。

「まあ俺は……夜景より、莉央見てる方が好きだけどな」
「…………」
「だからあんまり景色覚えてない」
「そ、それは嘘です……!」
「いや、本気」

 繋いだ手が熱くて溶けそう。
 一緒に過ごす時間はあっという間で。
 気付けばもうすぐ莉央のマンション。
 次の角を曲がれば……ってところで。

「莉央」
「はい?」
「帰りたくない?」

 どくん、と胸が跳ねる。

「……っ」

 慧がちらりと視線を向けて、少しだけ笑う。

「顔に出てる」
「……だって……」
「ん?」
「……今日、すごく楽しかったから」

 小さな声。
 でも、ちゃんと伝えたかった。

 慧は立ち止まり、繋いでいた手を軽く引いた。

「……慧さん?」
「こっち」

To be continued