__それから、三十分後。
あれこれ考えながらハムエッグを作っていると、ようやく櫂理君が二階から降りてきたので、体調のことを確認しようとした矢先だった。
視界には真っ黒なジャケットを羽織った彼の姿が写り、その場で唖然としてしまう。
しかも、シャツの胸元は第二ボタンまで開けていて、そこには金のネックレスがちらついている。
前髪もアップにして、右耳にはシルバーのカフスが付いていたりして。
とにかく、これまで見たことがない大人な雰囲気に、私は暫く目が離せなかった。
「……櫂理君。なんか今日の格好いつもと全然違うね」
徐々に高鳴る鼓動を抑え、僅かに震える声でそう尋ねる。
「ああ。莉子とのデートだから気合いを入れてきた」
すると、その質問に気分を良くしたのか。櫂理君は意気揚々とした面持ちでスーツの襟を正し、その仕草が余計乙女心をくすぐる。
「凄く格好いいよ!なんか一段と大人っぽくなった感じがする!」
堪らず感情が爆発し、これでもかと絶賛したら、なぜか櫂理君は目を点にして動かなくなってしまった。
「……え?いや、これはただ……」
しかも、やけに動揺し始め、私は何か変なことを言ったかなと。首を横に傾げる。
なにはともあれ、さっきよりも顔色が断然良くなっているので、ひとまずお出掛けは大丈夫そうかなと。そう思った私は、小さく胸を撫で下ろした。
__だけど、安心したのも束の間。



