「すごい、雨宮君!どの絵もみんな綺麗だね。またコンクールに挑戦するの?」
「いや。引っ越したばっかりだし、今はまだ。落ち着いたらまた挑戦する予定」
「そうなんだ。というか、雨宮君は美術部入らないの?私、雨宮君の絵、実際に見てみたいなー」
__雨宮君が転校してから数日が経過。
あれから彼とは大分打ち解けてきて、休み時間はこうしてお喋りする仲まで進展した。
始めは怖かったけど、席が私の真後ろということもあり、勇気を出して話しかけてみたら意外に穏やかな人だということが分かった。
最初の印象が強烈過ぎただけに、それ以降は割と普通で、気付けば気軽に話すようになっていた。
そもそも、櫂理君や圭君以外の男子とここまで話せるのは雨宮君が初めてかもしれない。
みんな背後にいる櫂理君を怖がって、私と深く関わろうとしないから、気兼ねなく話せる人が出来たことに少しだけ嬉しい気持ちになる。
その時、突然教室の扉が勢いよく開き、何事かと振り向くと、入り口には血相を変えて仁王立ちしている櫂理君の姿が見え、足早にこちらの方へと向かってくる。
「優星!部屋に来いって言っただろ。シカトしてんじゃねーぞ」
そして、私達の間に割って入り、雨宮君の首元を掴むとその場から引き摺り出した。
「ったく。莉子の弟って本当に面倒くせーな」
「てめえ、いつの間に呼び捨てしてんだよ!?」
「宇佐美じゃ紛らわしいだろ。てか、そのウザ過ぎる独占欲なんとかしろ」
それから、いつもの口喧嘩が始まったけど、これも最初の頃に比べると刺々しさが大分マシになってきたと思う。
何だか側から見ているとお兄ちゃんと弟が小競り合いをしているようで、ほっこりとした気持ちになれる。
こうなったのも、雨宮君があの最上階部屋の仲間入りになったことがきっかけだ。
櫂理君曰く、私に手を出さないよう監視目的であの部屋に引き連れたとは言っていたけど、おそらく心のどこかでは雨宮君を認めていると思う。
じゃないと、どんな理由があってもあの部屋には絶対に入らせないから。
最上階部屋を狙っている人は未だごまんといるけど、櫂理君達に太刀打ちできなければ先ずは選定される資格すらないし、その人が信頼出来るかどうかも大きく関わってくる。
たがら、雨宮君が転校して早々に最上階部屋に行けたことはかなり異例で、そこから彼の知名度は更に上昇し、今では校内トップ3の位置付けとなった。



