「はい。戯れはそこまで」
そして、櫂理君の息遣いが肌で感じられそうな距離まで迫ってきた直後。
絶妙なタイミングでお母さんは私と櫂理君の顔の間に雑誌を差し込み、丁度良い壁を作ってくれた。
「あんた達、暇なら夕飯の買い出しに行ってきてよ」
そこまでは良かったのに。
この状況を全く気にも留めない様子で、私達におつかいを頼んでくるお母さんの気が知れない。
「あー、はいはい。莉子、行こう」
それから櫂理君も櫂理君で、何事もなかったように私から離れたので、一人置いてけぼりをくらう。
……つまり、これは本当にただの戯れってこと!?
そう気付いたのは、数秒経ってからのことで。思いっきり真に受けてしまった私は、急激に恥ずかしさが込み上がっていく。
「もう、櫂理君のばかっ!」
そして、悔しい気持ちと一緒に怒りを吐き出すと、そのまま財布を取りにさっさと二階に上がって行った。



