「薬が出回ってる?」
圭から呼び出しをくらい、いつもの部屋に行くと、何やら神妙な面持ちで持ちかけられた話に俺は首を傾げた。
「どうやら売人が潜んでるみたいで、学校側は密かに警察と動いてるらしいよ」
「……ふーん。なるほどな」
確かに荒れに荒れた学校だから、薬物使用者が一人二人いてもおかしくない気はするが。
「ここで出回ってるっていうのは厄介だな……」
つまり、万が一にでも莉子が薬物を使用している現場に遭遇してしまったら、いくら背後に俺がいたとしても危険な目に遭う可能性は大いにある。
それだけは何としてでも避けたい。
「それで、出所の情報は掴めてるのか?莉子との時間を邪魔した対価は払ってもらうぞ」
俺は未だ鎮まらない怒りを露わにしながら、所定のソファーに腰を下ろした。
「案外簡単に見つかったよ。この前催眠術師のおっさん奪いに暴力団の奴ら殴りに行っただろ?どうやら、あいつらが所属する事務所でバラまいているらしい。それで、色々なところから情報を集めてみたらすぐ分かったよ」
そこまで話すと、圭はポケットからある一枚の写真を取り出し、俺の前に差し出す。
毎度思うけど、こいつの情報網は相変わらず警察以上だなと。
感心しながら、出された写真に目を向けると、そこには同じ制服を着た、至って平凡な男が写っていた。
強いて特徴を挙げるとしたら、キツネみたいに目が細いくらい。
「三年五組の坂上亮太。そいつがここの売人だよ。だから、これをどう扱うかはお前に任せる」
すると、まるで試すような圭の言い方がバカらしく思え、俺は鼻で笑った。
「任せるも何も徹底的に潰す。それだけだ」
莉子を危険な目に晒す奴らに対する制裁は、それしかない。
「まあ、そう言うと思ったよ」
そんな俺の返答に圭は小さく笑うと、向かいの一人掛けソファーに腰を下ろし、こいつをどうするか作戦を立てようとした時だった。
「櫂理君いる!?」
突然部屋の扉が勢いよく開き、振り返ると、そこには息を切らした莉子の友人と、そいつに腕を引っ張られている優星がいた。
「なんだよ。今大事な話してんだけど?」
これが莉子だったら、全てを投げ捨てて全力で迎え入れたのに。
期待外れな結果に、俺はあからさまに嫌な顔を向ける。
「莉子が行方不明なの!授業始まっても全然戻ってこないし、携帯鳴らしても全然出ないし、櫂理君知らない!?」
すると、取り乱した様子で駆け寄ってきた女の話に嫌な予感がして、ソファーから立ち上がった。
「莉子の姿が見えなくなったのはいつからだ?」
「前の授業が終わってから。落とし物を先生に届けるって言ったきり帰ってこないの」
そして、女が言ったあるフレーズが引っ掛かり、眉を顰める。
「落とし物って?」
それは圭も同じだったようで、俺よりも先にそこを追求してきた。
「なんか折り畳まれた茶封筒。中身は分からないけど、変な膨らみがあったから手紙とかではなさそう」
どうやら、嫌な予感は的中したかもしれない。
そう確信した俺は圭に目配せすると、こちらの意図を汲んだようで、圭は無言で頷く。
「とりあえず、まずは職員室から莉子の軌跡を辿るぞ」
すると、これまで無言で突っ立っていた優星の一言により方針が決まり、早速莉子の捜索活動を開始をするため、俺達は部屋を出た。



