一体何があったのか気になるところだけど、それよりも、家に帰って何をされるのかそっちの方が気になり過ぎて、今でも鼓動が鳴り止まない。
ただでさえ頭がパンクしそうなのに、これ以上櫂理君に触れたら、私はもう抗えないかもしれない。
そんな不安に駆られていると、次の授業が始まる予鈴が鳴り、ふと部屋の隅にある壁掛け時計に目を向けた。
結局サボったのは一限分だけだったようで。これ以上一人で居ることも嫌になり、私は大人しく部屋を後にする。
それから美南にメッセージを送って、教室に戻ろうと、廊下の突き当たりを曲がった時だった。
「いた!」
丁度向かいから来た男子生徒の肩にぶつかり、私は慌てて頭を下げる。
「すみません、私の不注意で」
「……いや。俺の方こそ」
特に文句を言うことなく、男子生徒は軽く会釈してからこの場を去って行った直後。
足元に転がっている茶封筒がふと視界に入り、拾おうと手を伸ばす。
すると、突然スマホの着信音が鳴り出し、急いでポケットから取り出すと、画面には美南の名前が表示されていた。
「もしもし。……うん、もう大丈夫。ごめんね、迷惑かけて。今から戻るから」
どうやら私のメッセージにすぐ反応してくれたようで、申し訳ないと思いながらこれまでの経緯を話し、通話を終了させてからポケットにスマホをしまう。
そして、改めて床に落ちていた封筒を拾い、来た道を駆け足で引き返した。
「……やっぱり、もういないよね……」
案の定。通路には男子生徒の姿は見当たらず、私は小さく息を吐いて肩を落とす。
おそらく、この茶封筒の落とし主はあの人で間違いないと思うけど、生憎どこの誰なのかまったく分からない。
このまま持っていても仕方ないので、後で先生に落とし物として届けることにして。
私は茶封筒を一旦自分のポケットにしまい、教室へと戻っていった。



