__翌朝。
日曜日の午前九時。
「おはよう莉子」
「あ……。お、おはよう櫂理君」
いつものように朝の挨拶をしたら、何やら思いっきり視線をそらされてしまった。
そして、普段なら朝ご飯は何がいいか聞いてくるのに。
その先の会話は一切なく、逃げるように莉子は自室へと戻って行った。
これは、完全に避けられている。
もう少しオブラートに包んで欲しいと言いたかったけれど、莉子の性格を考えたら無理な話なのは分かる。
これも全部自分が悪い。
理性が抑えきれず、一線を超えるギリギリのことをしてしまったんだから、こうなるのも仕方がない。
そう自分に言い聞かせているけれど、こうあからさまに避けられると、やっぱり傷付く。
莉子に間接キスをしたことは後悔していない。
むしろ、そこまで出来た自分を褒めてあげたいくらい。
だけど、その代償は予想以上に大きくて。
これからどうすればいいか、俺は頭を悩ます。
それにしても、間接キスした後の莉子の表情、ちょっとエロかったな。
弟じゃなくて、男として向けられたあの視線。
思い出しただけでも、ぞくぞくする。
「櫂理、あんたこんな所でなに突っ立ってんの?ヒマなら洗濯物手伝ってよ」
すると、突然背後から母親の声が聞こえ、遥か彼方に飛んでいた意識が、一気に引き戻される。
「莉子に頼もうとしたら、なんかあの子ずっと上の空だったし、昨日から様子が変なのよね……」
そして、何かを探るような鋭い眼差しを向けられてしまい、ぎくりと肩が震えた。
「櫂理。あんた、まさか約束やぶってないよね?」
それから、核心をつく質問を投げられ、一瞬だけ言葉に詰まる。
「や、やぶるわけねーだろ。俺の本気舐めんな」
とは言っても、紙一重だったけど。
そう心の中で付け足すと、俺はしどろもどろになりながら母親の目を見返した。
「……あっそ。ならいいけど。それじゃあ、これ外に干しといて」
すると、案外あっさり納得してくれた代わりに大量の洗濯物を渡され、俺は軽く舌打ちすると、渋々ベランダへと向かった。



