敏腕記者の怪我は溺愛の始まり~そんな昇格結構です

 高原の有無を言わせぬ目に追い詰められて、雪はコクコクと頷いてしまった。

「えっと、ごめんなさい。一応、お名前と連絡先を伺ってもいいかしら?」

 お母様が雪に聞いてきた。カバンから名刺を取り出すとお渡しした。

「私の携帯の番号も書いてありますので、何かありましたらこちらにご連絡ください」

「じゃあ透のこと、どうぞよろしくお願いします。透、無理はダメよ」

 雪に向かって今度はお母様が丁寧に頭を下げてくれた。

 雪はびっくりして同じように頭を下げた。

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします……」

 お母様が病室を出て行ったあと、雪は大きなため息をついてチーフを睨んだ。

「おいおい、そんなに睨むなよ」

「いくらなんでもやりすぎです。どうしてくれるんですか?」

「とりあえず、怪我の面倒を見てくれる人がいるとわかれば母は撤退する。実家なんてまっぴらだ」

「まあ……気持ちはわかりますけど……」

「仕事とプライベート、丸ごと俺のことを任せられるのはお前しかいない」

「え?」

「お前は棟違いのマンションに住んでいて、今までだって仕事でうちに来たことがあるじゃないか」