家庭教師ひかるの甘い個人レッスン

 父の進めたお見合いを断った和夫は数日後、街中の喫茶店てひかると話し合っていた。

 注文したコーヒーはもう冷めていた。
 店内に流れる音楽が二人の雰囲気を和ませた。
 
 プラタナスの造花のみどり色は、店内に調和を与えていた。

 和夫「お見合いは断った」
 和夫「相手はびっくりしていたけど、大丈夫」
 
 和夫「僕はひかる先生が好きだから…」
 ひかる「あなたはそれでいいのね?」
 
 ひかる「後悔なんてしないのよ?」
 和夫「当たり前さ、わかってる」
 ひかる「ひかる先生は僕だけののもの、僕はひかる先生だけのものなんだ」

 和夫は、テーブルの上のコーヒーカップを口もとに運び一口含んだ後にカップを
 再びソーサーに置いた。
 ひかるは和夫を見つめ続けていた。

 和夫「僕、また外国の大学に戻ることにしたんだ」
 和夫「ひかる先生の指導が僕をやる気にさせて、愛情もたくさんもらって僕はそれで幸せさ」
 
 和夫「大学でもっと頑張れる気がしてきて...」
 ひかる「それって私がいるから?」
 
 和夫「それは当然、ひかる先生がいない僕なんて、魂の抜けたただの人の殻さ」
 和夫「ひかる先生が僕のそばにいてこそ、僕らしい僕があるんだ」

 和夫は、ひかる先生のことがよほど好きなのであった。
 その愛情は一途な依存を超えた、和夫の性格の一部になっていた。

 和夫「だから何があっても逆境からは逃げない」
 和夫「いつもひかる先生の愛とことばがあるから僕は大丈夫」
 
 ひかる「約束する?」
 ひかる「絶対よ!」

 再度の大学への復帰は、父のためではなく、和夫とひかるのための新しい挑戦であった。

 喫茶の窓から真昼の太陽が明るく店内を照らしているその光が、ひかるの綺麗な髪にフラッシュバックしてひかるを美しく輝かせていた。

 和夫「だから僕と一緒に来て欲しい...」
 和夫「僕と毎日をともにしてほしい」
 
 和夫「そして、いつも僕の隣にて欲しい」
 和夫「ひかるの欲しいものはなんでもあげる」
 
 和夫「だからいつだって一緒さ」
 和夫「だから、僕の欲しいものも…」

 ひかるの目は潤みはじめていた。
 髪に手をやったり指先を庇(かば)ったり、ハンカチを何度も翻(ひるがえ)していた。

 ひかる「わかったわ...」
 でも、和夫を失いたくない当然の欲求はひかるを本当のひかるにするのだった。

 百合の花の輝きはこれまでない真の輝きと白さを見せるかのように、
 澄んだ空からの太陽が燦々(さんさん)とひかるを誇り高くしていた。
 百合の花が注ぐ愛情は、どこにいてもいつも同じなのだから。

 28歳のひかるはキャリアを築いてきた自分に誇りがあった。
 だから、ただ”ついていくだけの女”にはなりたくなかった。

 失いたくないひかるの和夫への愛情は白い百合の花をピンクの百合の姿に変えていた。

 気高い高貴な百合の品格はひかるを威厳ある真の大人の女性として讃(たた)えていた。
 芳(こうば)しい百合の香りは控えめなひかるの心づかいを気づかせる。

 ひかる「もし私があなたを失くしたら、私もどうなるのかわからないわ...」
 ひかる「これは私の本当の愛ね」

 ひかる「たわごとなんかじゃなくて、私の真実だわ...」

 和夫はひかるのしぐさを見て、ひかるのこころの動揺を察していた。
 和夫「本当の大人になるために、成長してひかる先生の隣に立てるほどに

 成熟したいんだ」
 和夫「そうすれば、ひかる先生を真の大人として迎えられる」

 和夫「その時には必ず本当の大人としての僕を庇(かば)ってください」
 和夫「ひかる先生が導くのでなく、今度は僕が導く愛を分かち合ってください」

 和夫はひかるを抱き寄せた。
 しばらくそのまま抱擁を続けた。

 和夫「ひかるが欲しい...」
 ただ、先生としてのひかるではない、一人の女としてのひかるを欲しているのでした。

 和夫はひかるにそっと指輪を差し出した。
 ひかる「わぁ、きれい!」

 純粋な愛の輝きを放つ鉱石は、ひかるを子供のように純真で汚れのない姿にしていた。

 そのこころは、白百合のように、こころが澄み切って、青空にまっすぐ伸びる清純な
 ひかるを意味しています。

 和夫「一緒に未来を作りましょう!」

 気づいたらひかるは、大粒の涙を見せていた。

 ひかる「合格よ!」

 和夫から導くようにそっとキスをした。