無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

マルはの事情は分からないが、先ほどまだ全ての力を取り戻したわけではないため、強大化することも短時間しか無理だと言っていた。
さっき巨大化したばかりのマルにはもう戦う力は残ってないのではないか、そう思った。

(何か武器を……!)

私は急いで先ほど蹴り飛ばされた、薪を拾いに駆けだす。

「ダメだ、真白! 動くなきゅ!」

「グルッ、許さない!!!」

彩芽様は着物の帯がほどけるのも構わず、地面を蹴って飛びあがると、私の首元に向かって牙をむいた。

(──噛まれる)

「真白!!」

私の身体は大きな腕に引き寄せられると同時に、目の前が灼熱の炎に包まれる。
彩芽様は断末魔の叫びをあげるとその場にぐったりと横たわった。

「真白、怪我はないか?」

「ち、千隼様……どうしてここに」 

「鬼狩りを終えて戻る途中で下女から聞いたんだ」

千隼様は私の頬に触れ気遣うように顔を寄せた。

「怖かったな。もう大丈夫だ」

「はい……っ」

目の前の千隼様にほっとして、私は千隼様の胸に顔を埋める。
鼓動に心地よさを感じていれば、大きくて温かい手がいたわるように髪に触れる。

「……おいおい、我を忘れてないか?」

「ん? なんだこの狐」

千隼様は私から体を離すと、マルをみて切れ長の目を大きくした。