無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

四本鬼はぼそりと呟くと、そのまま勢いよく彩芽様の首に嚙みついた。

「ぎゃあっ!!」

「あ、彩芽様!」

「痛いっ、離して!! このクソ鬼!!」

彩芽様は食らいつく鬼を髪を掴んで引き離すと、爪で四本鬼の目を潰し、血まみれになりながら屋敷内に駆け込む。

あっという間の出来事に理解が追い付かない。目を潰された鬼は、のたうちまわりながら鼻を引く突かせている。

「匂い……グルル、人間の匂い。そこか……」

鬼が私をめがけて牙をむく。私は手を交差させると防御の構えを取った。

「きゅう!!」

(え?)

目の前にマルが飛び出してくると、鬼に向かって威嚇を始める。

「だめっ!! マル!!」

私がマルに手を伸ばした同時に、突然目を開けていられないほどの眩い光に包まれる。
白銀の光の中央には巨大化したマルの姿があった。

マルは目にも止まらぬ速さで四本鬼を鋭い爪で真っ二つにする。すぐに先ほどまでのたうちまわりながら、私に襲いかかろうとしていた鬼は地面の上に黒い砂と化した。

「真白。もう大丈夫きゅ」

「マル……あなた一体……それに、その姿……」

「やっと我は本来の自分に戻れたきゅ」

「それが本来のマルの姿なの?」

マルは大きな尻尾で嬉しそうに振りながら、えとへんと胸を張った。

「我は四大神獣(よんだいしんじゅう)が一人、黒狐(こっこ)ナユタノマルだ」

「マルが……神獣?!」