無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

※※

日が暮れてきたが、まだ千隼様は戻ってこない。玄関の掃き掃除を終えた私はそのまま炊事場へと足を向ける。

(夕餉は一緒に食べれたらいいのだけど……)

私は腕まくりをすると、鍋に水をいれ火をおこそうと火打石を取り出した。

「──きゃあああああ!」

突如、響き渡った下女と思しき悲鳴に私は体がはねる。

(今の悲鳴……)

聞こえてきたのは離れの方からだ

「──誰か……誰か助けてーー!!」

(!!)

すぐに離れに駆け付けると私はひゅっと息を呑んでいた。見れば離れの庭に鬼がいて下女に今にも襲いかかろうとしている。

(どうして鬼が……)

この屋敷には千隼様が張った鬼除け結界が張り巡らされており、不在であってもその効力は消えることはない。

(まさか千隼様になにかあったの……?)

「ぐるるるる……」

(鬼は一本鬼と二本鬼だわ。これなら鬼の弱点である角を叩けば私でも倒せるかもしれない)

私はしりもちをついて身動きの取れない下女に駆け寄ると下女が持っていた薪を手にする。