無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される



「ありえない、ありえない、ありえないっ!」

爪をカチカチと噛み、怒りを抑えようとするが耐えられず今にも爆発しそうだ。

「“無能モノ”のくせに、千隼様と初夜をすごすなんて……」

あたしは下女を脅して神堂家の庭に忍び込むと、寝室が見える木陰から二人の様子をずっと見ていた。
会話はとぎれとぎれににしか聞こえなかったが、あの“無能モノ”が桜天女の生まれ変わりだと聞いたときは、全身が震えるほどの衝撃が走った。

桜天女については亡きおばあ様に何度か聞いたことがあった。桜天女の生まれ変わりは一之宮家または我が光小路家のみに現れるそうだ。
そして桜天女のもつ“天授の力”は唯一無二であり、どんなに優秀な浄化師でもその力は足元にも及ばないと。

「あんな……“無能モノ”が天授の力を扱えるはずないわ……! このアタシより優れてるなんて、絶対にありえない!!」

ただ聡明な千隼様が嘘をつくとも、根拠もなしにあの女を桜天女の生まれ変わりだと口にするとも思えない。

「目障りね……一体どうしたらいいのかしら……」

その時、あたしはあることを思い出すと噛んでいた爪を歯から離した。

「うふふ、いいこと思いついちゃった~」

先日、街の裏市場で買ったアレを試してみるいい機会だ。あたしは心配そうに千隼様を見送り、手を振る真白を見ながらニタリと笑った。