無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

「あ、あの……御着替え中とは知らず、大変失礼致しました……その、えっと」

真白が俺の裸を目にして恥ずかしがり、顔を覆っていることに気付き、俺は首に手をまわした。

「悪いがこっちを向いてくれないか。鬼紋が消えたんだ」

「え?」

真白はすぐに顔を覆っていた手を離すと、俺の胸元をじっと見つめる。その両目にはすぐに涙が浮かぶ。

「そんな……奇跡が起こるなんて……」

「いや。真白ちょっと手を見せてくれ」

俺は着物を羽織りなおすと、真白の白く華奢な手を取る。そして親指でなぞるように触れながら凝視する。

手からは特に気の力も浄化の力も感じない。だが、神経を集中させてみれば、こうして手と手が触れあっているだけでも僅かに身体と心が安らぐのがわかる。
言葉に形容するのは難しいが、これが癒しと呼ばれる力なのではないだろうか?

「千隼様?」

「お前は、桜天女の生まれ変わりなのかもしれない」

「え……何を、突然……」

「俺が帝都に戻ってきて、したことは真白と一緒に過ごしたことだけだ。真白の作った食事を食べ、着物を着て手を繋いで眠った。そうしたら鬼紋の一部が消えていた。真白の手には天授の力があると考えたら、つじつまはあわないか?」

「私は……“、無能モノ”です……そんな大それた力など……」

真白は信じられないといった表情で、大きな目をさらに大きくして首を振る。俺は真白の両肩に優しく触れた。

「お前は無能モノなんかじゃない。俺の鬼紋を解呪できる、唯一無二の天授の力をもつ花嫁だ」