無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される



身体が軽く、繋いだ手のひらが温かくて心地がいい。俺は瞼に朝日を感じながら、隣の真白を抱き寄せた。甘い髪の匂いに誘われるように目を開ければ、あどけない寝顔が見える。

(寝顔は幼いな)

昨晩はよほど疲れていたようで、真白は俺と布団に入ってすぐに眠ってしまった。
寝室に誘ったのだから、全く欲がなかったわけではないが眠った真白を胸に抱え、愛らしい寝顔を見つめているだけで、心は多幸感でいっぱいになり、気づけば俺も眠ってしまっていた。

(桜天女に天授の力、か……)

真白の前では桜天女を探すと言ったが、日記に記されていた桜天女の話が事実かと問われれば正直、信じがたい。

もちろん解呪方法を探すことを諦めないと決めたのは本当だ。少しでも長く真白と共に過ごせるよう、薬師に薬の相談をしようと考えている。

(もうすこし寝かせておいてやろう)

真白の髪をひと撫でして布団から出ると、障子を開ける。
差し込んできた朝日に目を細めながら、俺は息を呑んだ。

「……え?……」

姿見に移る俺の鎖骨から胸にかけての鬼紋が消えているのだ。
腹部の一部や足にはまだ出ているものの、今まで増えることはあっても、消えたのは初めてだ。

「一体……どうなってる……?」

すぐに着物を脱ぎ上半身をじっくり観察すれば、あんなにびっしりとあった鬼紋が上半身はほぼきれいになくなっている。

「どういう……ことだ……?」

よく考えれば、ここ数日、鬼紋による痛みの発作がなかったことにも気付く。

(夜になると必ずあった発作がない?)