無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

「ん……っ」

目を開けると布団の上で、視線を窓辺に向けると眩い光が差し込んでいる。

(あれ、私……いつの間にか眠って……)

そして窓辺とは反対側に視線を向けた私は息を呑んだ。

隣の布団には千隼様が眠っていて長い睫毛を静かに揺らしていたからだ。

(そうだ……昨日はあのまま……)

千隼様からそばにいてもいいと言われ、抱きしめられてほっとして、そのまま眠ってしまったようだ。

私は千隼様を起こさないようそっと起き上がる。布団から出ようとすれば大きな手が私の手を掴んだ。

「あ、の……起こしてしまったようですね。申し訳ございません」

「いや、大丈夫だ。それよりどこにいくんだ?」

千隼様の瞳はいつだって真っすぐに私を見つめて居心地が悪い。心臓がそわそわして勝手に顔が熱くなるのだ。昨晩は初夜を過ごしたわけではないが一緒に眠った事実が、余計に私の胸を騒がしくする。


「あの、その、着替えに行こうかと」

「そうか、それはそうと熱でもあるのか?」

「え?」

千隼様の手がするりと私の頬に触れる。

「あ、あの……」

「いつもより顔が赤い」

「そ、そそそれは……あの、その千隼様が……」

「俺がなんだ?」

「な、なんでもございません。着替えて顔を洗ってまいります」

ようやく手のひらが頬から離れる。千隼様がクッと笑ったような気がしたが、私は振り返らずにすぐに私室に着替えに向かった。