無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

驚いた私を見ながら、膝の上のマルは大きな目を三日月のように細める。

「えっと……私ったら、離縁されることに動揺して空耳まで……」

「真白、違うきゅ」

「い、いま……真白って……」

マルは膝から降りると、私の横にちょこんと座り、得意げに鼻を鳴らした。

(われ)が、人間の言葉を話せるようになったのは、真白のお陰きゅう」

「嘘……、マルしゃべれるの?!」

「やっと……我は言葉を取り戻したきゅう」

「そ、れはどういう……」

「今はゆっくりはなせないきゅ。我は、行くとこがあるきゅう」

マルは身軽に弧を描いて縁側に降り立つと、長いしっぽを一振りする。

「真白、助けになるきゅう。アイツが……千隼が死んでしまうまえに」

「え……?! そ、それはどういう意味なの……?」

その時、夜風がびゅうっと強く吹き抜けていく。

目を開けるとすでにマルの姿はなく、夜空には満月が煌々と静かに輝いていた。