無能の花嫁は余命僅かの鬼狩り当主に溺愛される

「ねぇマル……私、三か月経ったらここを出ていかなくてはいけないの」

マルは小さな手で毛づくろいをしながら、私の言葉に耳を傾けるかのように三角の耳をピンと伸ばす。

「だから三か月経ったら、もうここには来てはだめよ」

この屋敷を出入りしている彩芽様は大の狐嫌いなのだ。
彩芽様だけではない。この世界で狐は鬼の使いとされており、忌み嫌われている。

初めてマルを見た時、その存在が自分と重なった。生まれながらにその存在を否定される私とマル。

「もし、誰かに見つかれば……きっとひどい目にあわされるから」

今までは誰かに見られる前にマルを隠したり逃がしたりしていたが、今後私がいなくなれば食事を求めてここにやってきて見つかるのは時間の問題だ。

ぴょんと私の膝にのり、愛らしい眼差しを向けるマルの小さな額を撫でてやる。

「わかった? マル?」

「きゅううん」

マルは甘えるように額を手に摺り寄せてくる。

「私が狐の言葉を話せたらいいのだけど」

その言葉にマルが顔を上げると私をじっと見つめた。

「……きゅ……わかってる、きゅ」

「え?」