人形姫と秘密のお役目 -1-

 沈黙を探るように、“それ”の気配が変わった瞬間、空気がずん、と重く沈んだ。


「……貴様」


 ゆらりとこちらを向く。


「まさか、夜桜の者か?」


 答える必要はない。
 そう判断するよりも早く、“それ”は確信したように歪んだ笑みを浮かべ、そのまま腕を振り上げる。

 来る――だが。


(……やっぱり)


 人形越しでは、位置も間も、すべてが曖昧で掴みきれない。


(……自分の目で、視ないと)


 そう結論に至った瞬間、衝撃とともに土煙が激しく巻き上がり、視界は完全に閉ざされた。

 静寂が落ちる。

 やがて煙がゆっくりと晴れていくと、“それ”の歪んだ笑い声が響いた。


「……ははっ、やったぞ!夜桜の者を、殺してやった!」


 その背後で、私は音もなく立っている。


「――滅」


 静かに告げながら札を背に貼り付けると、霊力が弾け、“それ”の動きがぴたりと止まった。

 ゆっくりと目を開く。