人形姫と秘密のお役目 -1-

「……分かった」


 それ以上は言わない。

 言葉よりも先に、空気がそれを教えてくれている。

 進むにつれて、重さが増していく。

 音が、消えていく。

 虫の声も、風の音も、何もかもが遠ざかり――

 やがて、完全な静寂に包まれた。

 そこで、足を止める。


「……ここ?」

「はい」


 蒼真も立ち止まり、前方を睨むように見据えた。

 その先。

 地面には、倒れた人影がいくつも転がっている。

 陰陽師たちだ。

 衣は乱れ、札は散り、誰一人として動いていない。


 そして――


 その中心に、“それ”はいた。

 黒く、歪んだ何か。

 形を持たないまま、ゆらりと揺れている。

 人形越しでは、はっきりとは捉えられない。

 けれど、分かる。


(……強いね)


 その向こう側。

 ひとり、まだ立っている影があった。

 息を荒げながら、それでも必死に構えている。

 次の瞬間“それ”が、腕のようなものを振り上げた。

 狙いは、その少年。