人形姫と秘密のお役目

 御札を数枚持ち、人形を抱えて外へ出ると、夜の空気が肌に触れた。

 ひんやりとしているのに、どこか重い。
 息を吸うたびに、胸の奥にざらついた感覚が残る。


(……空気が重く、(けが)れている)


 私は人形を抱き直し、歩き出す。

 隣には蒼真。
 少し前を行きながら、周囲を警戒するように視線を巡らせている。


「場所は?」

「東の林の先です。桜丘学園から、数キロほど」

「そう」


 短く返しながら、私は足を速めた。

 夜道は暗い。
 けれど、人形越しに映る世界は、それ以上に曖昧だ。

 輪郭は滲み、距離はわずかにずれる。
 足元を確かめるように、一歩ずつ進む。


「……そうや」

「蒼真です」


 間を置かず、訂正が入る。


「……蒼真。あとどれくらい」

「もう近いです。ですが――」


 蒼真の声が、わずかに低くなる。


「報告によると、かなり強いらしいです。そこら辺のものと比べものにならないくらいかと」


 その言葉に、私は小さく頷いた。