蒼真もそれに気づいたのか、小さく咳払いをひとつ落とした。
「……夜桜さん、どうぞ」
何事もなかったかのように言い直す。
完全に誤魔化せてはいないが、大きく崩れることもない。
私はそのまま前に出た。
教卓の横に立つと、改めて視線が集まるのを感じる。
けれど、それ以上でもそれ以下でもない。
必要以上に言葉を重ねる理由はなかった。
「……夜桜澪、です」
それだけを告げる。
短い沈黙のあと、どこかで小さく息が漏れた。
「え、それだけ?」
かすかな笑いが混じる。
けれど、すぐに収まった。
「はい、じゃあ席は――あそこ」
蒼真が軽く指した先は、前の方の席だった。
私は頷き、そのまま歩く。
机の間を抜けながら進み、指定された席の前で足を止める。
椅子を引き、静かに腰を下ろした。
人形を抱いたまま。
そのとき、不意に背後からひとつの視線を感じた。
「……夜桜さん、どうぞ」
何事もなかったかのように言い直す。
完全に誤魔化せてはいないが、大きく崩れることもない。
私はそのまま前に出た。
教卓の横に立つと、改めて視線が集まるのを感じる。
けれど、それ以上でもそれ以下でもない。
必要以上に言葉を重ねる理由はなかった。
「……夜桜澪、です」
それだけを告げる。
短い沈黙のあと、どこかで小さく息が漏れた。
「え、それだけ?」
かすかな笑いが混じる。
けれど、すぐに収まった。
「はい、じゃあ席は――あそこ」
蒼真が軽く指した先は、前の方の席だった。
私は頷き、そのまま歩く。
机の間を抜けながら進み、指定された席の前で足を止める。
椅子を引き、静かに腰を下ろした。
人形を抱いたまま。
そのとき、不意に背後からひとつの視線を感じた。



