人形姫と秘密のお役目 -1-

「緊張してます?」

「……別に」

「さすがですね」


 軽く笑う声。

 そのまま、扉に手をかける気配。

 そして、教室の中へと足を踏み入れた。

 ざわめきがほんの一瞬だけ途切れ、すぐに元に戻る。

 視線が集まっているのは分かる。新しく来た私が物珍しいのだろう。

 けれど、気にする必要はないと判断して、そのまま歩いた。


「はいはーい、席ついてくださーい。ホームルーム始めますよー」


 どこか気の抜けた声が教室に広がる。

 蒼真だ。

 さっきまで隣にいたはずなのに、もう教卓の前に立っている。


(……早い)


「えー、今日は転校生が来てます」


 軽い調子のまま言うと、教室の空気が少しだけ色を変えた。

 興味が向くのが分かる。


「澪様――」


 一瞬だけ、言葉が止まる。

 わずかに空気が引っかかるような感覚。


(……様)


 この場には、合わない呼び方。