人形姫と秘密のお役目 -1-

 けれど、それを掴むには至らない。

 人形越しの視界では、どうしても輪郭が曖昧になるが、それによって気づくものもあるのだ。


(……穢れが、一段と濃い)


 わずかに眉を寄せるが、それ以上は追わない。よく知らないところで変に行動すると何が起こるか分からないからだ。

 廊下を歩くにつれ、周囲の視線が集まってくる。

 理由は分かっている。

 腕の中の人形。

 ちらり、と向けられる視線。ひそひそとした声。


「……人形?」

「え、あれ持ってるの?」


 小さく漏れる言葉。

 けれど、特に気にする必要はない。

 私はただ前を向いたまま歩く。

 隣の蒼真が、軽く肩をすくめる気配がした。


「まぁ、気にしないでください。すぐ慣れますよ。……たぶんですけど」

「……そう」


 少しだけ間が空く。

 そのまま歩き続け、やがて一つの教室の前で足が止まった。


「ここです」


 蒼真が軽く扉を指す。