人形姫と秘密のお役目

 一瞬、間が空く。


「……先生だったんだ」

「はい。驚きました?」

「……別に」

「そこはちょっとくらい驚いてください!?」


 わずかに空気が緩む。

 私は最後の糸を結ぶ。霊力の流れがひとつに繋がり、腕の中で人形がわずかに重みを取り戻した。


「どう? ちゃんと治った?」

「はい! すごいですね、新品みたいです。霊力の流れも安定していますし」


 そこ返事でホッとした私は、直ったばかりの人形をギュッと抱きしめる。


「今日はもう休むね、おやすみ」

「はい、おやすみなさい。澪様」


 そっと足音が遠ざかる。

 一人残り、修復された人形を抱き直す。形も重さも同じなのに、どこか違う。ほんのわずかな違和感が、確かに残っている。


(……何かが、起きようとしている)


 それが何なのかは、まだ分からない。

 だけど、刻一刻と、見えない何かが静かに音を立てて動き出した。