人形姫と秘密のお役目 -1-

 蒼真はそれ以上踏み込まず、静かに距離を取る。

 私は人形を膝に乗せ、そっと包み込んだ。

 意識を落とし、指先から細く淡い霊力を引き出す。それは糸のように細く、しかし確かな流れ。

 途切れた箇所へ触れさせる。


 ――繋ぐ。


 断たれた線を辿り、一本ずつ丁寧に結び直していく。霊力の糸が布の内側へ滑り込み、ばらけた繋がりを拾い上げていく。

 ずれていた感覚が、少しずつ正しい位置へ戻る。

 耳の根元、腕の付け根。見えない部分で断たれていた流れを逃さないように結ぶ。

 急げば壊れる。だから、ゆっくりと。

 確かめるように、時間をかけて。

 やがて、指先にかすかな反応が返る。ぴくり、とほんの微かな動き。それでも確かに“戻り始めた”証だった。

 そのまま糸を重ねていく中で、ふと記憶がよぎる。指示をしていないのに動いた人形。自分の意思のように札を使ったあの動き。


(……気のせい?)


 結論は出ないまま、違和感だけが残る。